Move to Earn(M2E)の持続性 – SuperWalkを中心に考察
はじめに:M2Eとブロックチェーンゲームの現状
M2Eは歩いたり走ったりといった運動によってブロックチェーン上の報酬(暗号資産)を得られる仕組みであり、健康管理と収益化を両立するコンセプトです。僕はSuperWalkというM2Eにのめり込んでプレイしていますが、他の代表例として2022年に爆発的ブームとなったSTEPN(ステップン)や、1億人以上のユーザー基盤を持つSweat Economy(スウェットコイン)などが知られています。
一方で、多くの従来型ブロックチェーンゲーム(Play to Earn = P2E)はユーザー離れとトークン価値の急落に悩まされ、「P2Eは持続性に乏しいがM2Eは唯一生き残っている」との仮説も聞かれるようになりました。
この記事では最近ぼんやりと感じるこの「BCGはM2Eしか持続性がない」説に説得力を持たせるために、「SuperWalk(スーパーウォーク)」目線から、コラムっぽく言語化してみようと思います。
SuperWalkとは:概要と成長
SuperWalkはKlaytnチェーン(現:Kaia)上で2022年にサービス開始したM2Eアプリで、スマホのGPSで計測したウォーキングやランニング量に応じて暗号資産を獲得できるプラットフォームです。無料で遊べるベーシックモードと、NFTスニーカーを購入して本格的に稼げるプロモードの両方を備えており、初心者でもゼロコストで始められる間口の広さが特徴です。
SuperWalkのユーザー数はサービス開始以来着実に増加しており、直近の月間アクティブユーザー(MAU)は8万人以上に達し、特筆すべきはユーザーの定着率(スティッキネス)で、DAU/MAU比率が70%超という驚異的な水準を維持しています。一般的に新興アプリで50%を超えれば急成長が見込めると言われる中、M2Eは習慣化と紐づいている強さを感じます。
しかし同時に、SuperWalkのユーザーベースはまだ地域偏重です。実際ユーザー数の9割が韓国ユーザーであり、日本ユーザーは1割ほどにとどまっています。ですが、すでに日本コミュニティも活発であり、オンライン、オフライン問わず定期的にイベントが開催されています。特にイベントの頻度とゲーム性の追求は他のM2Eと比較しても頭一つ抜けていると思います。
というのも、普段発信してないだけで僕は今TLに上がっているようなM2Eは全てプレイしているので、実感としてそう思っています。
・・・すいません、とはいえこの辺はSuperWalkポジトークです。w
他のM2Eプロジェクトの現状
ここで言いたいのはどのプロジェクトが良い、悪いということではありません。なぜ多くのM2Eが今なおユーザーが定着し、コミュニティとして活発なのか?という目線で現状の盛り上がりを知ってもらいたいという意図です。
STEPN(ステップン)の現在
M2Eブームの火付け役となったSTEPNは、その急激な盛衰がしばしば議論の俎上に載せられます。STEPNは2021年末にサービス開始し、「歩いて稼ぐ」という斬新さから2022年前半に世界的人気を博しました。ピーク時の2022年5月には月間アクティブユーザー約70万人を記録し、$GSTも一時1トークン=1,000円以上という高値を付けて一台ムーブメントになったのはもはや伝説と言っていいでしょう。
お世辞抜きに、全てのM2Eの始祖であり、ベンチマークだと思っています。
現在も世界中でコミュニティが活発であり、日本も地域ごとあるいはJapan Meetupのような全国的なイベントも定期的に開催され、もはや投資、投機の枠を超えて全く新しいポジションを築いています。
そして「STEPN GO」という新アプリを2024年6月にリリースしました。STEPN GOではPolygonチェーンに移行し、NFTスニーカーのレンタル機能やメールアドレス登録対応など、STEPNOGと比較して重点的にWeb2ユーザー誘致を意識した設計になっています。
Sweat Economy(スウェットエコノミー)の大量ユーザー路線
もう一つの代表的M2EがSweat Economy(通称:Sweatcoin)です。こちらはもともと2016年に登場したWeb2アプリ「Sweatcoin」が前身で、歩いた歩数に応じてアプリ内ポイント(SWC)が貯まり、提携商品と交換できるヘルスケアアプリとして世界中で普及しました。
2022年9月にブロックチェーン版トークン$SWEATを発行してWeb3に本格参入し、現在も累計ユーザー数1億2,000万人以上と、この分野で最大のユーザー基盤を持ちます。2022年には全世界で最もダウンロードされたヘルス&フィットネスアプリにもなっており、その知名度は群を抜いています。(日本ではあんまり)
Sweat Economyの特徴は、完全無料で利用できる点とトークン配布量に独自の制御策を設けている点です。基本的に歩くだけで稼げる点はSuperWalkなどと同じですが、1日の最初の5,000歩までしか暗号資産$SWEATは生成されず、それ以降の歩数は従来のアプリ内ポイント(SWC)として付与されます。しかも$SWEATは時が経つほど獲得難易度が上がる仕組みになっており、いわば「トークンのビットコイン的半減期」のようなメカニズムで、参加者増加による供給過多を防いでいます。
もっとも、無料アプリゆえに一人当たりの稼げる額はごく僅かであり(歩数上限もあるため)、ユーザーの主目的は「大金を稼ぐ」より「健康のついでに少し得する」程度にとどまっています。
それでも圧倒的なユーザー数(1億人超)はプロジェクトの強みであり、英国国民保健サービス(NHS)と提携して歩行促進キャンペーンを行うなど、社会的な展開も見られます。Sweat Economyは「まずは人々に歩く習慣を根付かせ、その膨大なユーザーデータとコミュニティを将来のWeb3サービス展開に活かす」というスタンスで、短期的なトークン収益より長期的なプラットフォーム価値を重視しているようです。
この他にも、最近は国産M2EのHEAL3なども勢いを増してきている雰囲気があります。トークン価格も他のM2Eと比べても安定して推移しています。
M2Eはなぜ持続性が高いのか:事例から見る理由
以上見てきたように、ブロックチェーンゲーム領域ではP2E型の多くが隆盛から急落へ転じた一方、M2E型は比較的息長くユーザーに利用されています。「ブロックチェーンゲームはM2Eしか持続性がない」説を裏付ける要因として、以下のポイントが浮かび上がります。
- ① 実生活の価値と直結している
M2Eは「健康になる」「運動習慣がつく」という実世界でのポジティブな価値を提供します。ゲーム内報酬が多少下がっても、ユーザーは健康増進や達成感といったメリットを得られるため、純粋な金銭目的のP2Eよりも離脱しにくい傾向があります。Yes,健康ロング。※健康ロングとは「M2Eをやることで健康に対して買いポジションを持つ」という意味でM2E界隈で使われているワード - ② 広いユーザー層を取り込める
M2Eはゲームファンだけでなく、健康志向の一般層をも巻き込めます。無料で始められるSuperWalkやSweatcoinには、従来の仮想通貨に縁のなかったユーザーが多数参加しています。母集団が大きければ多少の離脱があってもサービス全体は存続しやすく、ネットワーク効果も働きます。対照的にP2Eゲームはゲーム好き・投機好きという限られた層に偏りがちで、新規参入が止まると一気に尻すぼみになりやすい構造でした。 - ③ コミュニティ主導の発展
M2Eでは「みんなで頑張って稼ぐ」「記録をシェアして励まし合う」といったソーシャル要素が強く、コミュニティがプロジェクトを支える原動力になっています。コミュニティメンバー自らがイベントを企画したり、ローカル情報サイトを整備したりと、ユーザーが能動的にプロジェクト価値を高めているのです。この点、プレイヤー同士の繋がりが薄く匿名的になりがちなP2Eゲームとは対照的です。
強いコミュニティは多少の報酬減では崩れず、むしろ「自分たちで盛り上げてサービスを良くしていこう」というポジティブな循環が生まれます。Web3ゲームにおいてコミュニティの熱量は最大の無形資産であり、M2Eはそれを引き出しやすい土壌を備えていると思います。
つまり「健康ロング×コミュニティ」によって一度参入したユーザーは離脱する理由があまりない。と言うのが大きいのかなと。仮に全然原資回収が見込めず損している状況でも、何年も続けてたら健康になるし多少は回収できるし、コミュニティにも属せるし、やらないよりずっとマシ。
このような心理が働いていると思うので、M2Eはユーザー数が高い水準で維持できるのだと思います。
無意識に「界隈マーケティング化」しているM2Eコミュニティ
界隈マーケティングとは、ある製品・サービスを取り巻く“小さな熱狂圏”を意図的に育て、内部メンバーの帰属意識・優越感・相互承認をエンジンにしてロイヤルティを高める手法。
M2Eにおける界隈感とは①固有の言語や儀式(専用ハッシュタグ、限定ロール、POAP など)を共有させ、②外部との境界線をぼんやりと引きつつ「中の人」ステータスを演出し、③自己表現の舞台(ランキング、ミント履歴、オフ会写真など)を用意して承認を循環させることにある。
M2Eに特有の“居心地の良さ”
DeFi 界隈では「年利◯◯%以下なら撤退」「効率悪いファームは即乗り換え」といった声が飛び交う。一方、M2Eコミュニティではそうした“効率厨”の発言をほとんど見かけません。その理由は二つかなーと。
- ユーザー属性の多様性
M2Eにはヘルスケア目的のライト層、ゲーミング好き、NFT コレクターなどが混在し、純粋な投資効率だけを追うハイリテラシー投資家は少数派。結果として「ROI が下がったら即撤退」という空気が生まれにくい。むしろ「今日の歩数でこんなバッジが取れた」「限定スキンが当たった」という体験シェアがコミュニケーションの中心を占めている。 - 身体性とゲーム性が生む“非数字的報酬”
歩数や距離という実感できる成果と、NFT 育成・称号システムなどのゲーム要素が組み合わさり、数字以外の満足度が高い。たとえ APY が DeFi より低くても、健康増進・達成感・仲間との比較といった“情緒的リターン”が上回るため、ユーザーは離脱しにくい。
無意識に進む「界隈化」のプロセス
M2E プロジェクトが意図せずとも界隈マーケティング的循環が働くのは、以下の構造によるとおもいます。
プロセス | 典型的な仕掛け | 界隈化の効果 |
---|---|---|
入門ハードルの小分け | 無料モード、メール登録、歩数だけで参加 | 誰でも“外側”から覗ける安心感 |
段階的な内側誘導 | NFT スニーカー購入でプレイの幅を広げる | 「中に入りたい」モチベーションを自然生成 |
可視化された努力と交換価値 | ウォーキング記録→トークン/NFT→イベント招待 | 努力が“資産化”することで承認ループが完成 |
仲間内比較と物語共有 | 週間ランキング、オフ会、SNS ハッシュタグ | 相互評価が継続参加の原動力に |
こうして形成された界隈では、“歩くほど仲間意識が深まる”という感覚が醸成される。その結果、APY 低下やマーケット冷え込みといった外的要因があっても「コミュニティに残ることで得られる無形価値」が“居心地の良さ”として機能し、ユーザーの離脱を抑制する粘着力が生まれる。
M2E が DeFi より経済効率で劣り得るのに定着率で勝る理由は、投資アプリではなく“日常と結びついた界隈プラットフォーム”へ自然進化しているから──と言えるのではないでしょうか?
「損切り下手」か? それとも「試合に負けても勝負に勝つ」か?
では果たしてM2Eを続けるユーザーは投資的な観点から見てどうなのでしょうか?リテラシーの高いネイティブクリプト民からすると多大なサンクコストを支払っているように見えるのかもしれません。果たしてそうなのでしょうか?
― ウォレットは痩せてもウエストは締まる
「NFTスニーカーを買った瞬間からー30%」──M2E界隈ではよくある話。それでもユーザーは平然と歩き続ける。チャート上は真っ赤でも、鏡の中の自分は引き締まり、Discordでは仲間が「ナイス 10k 歩!」とスタンプを押してくれる。財布がスリム化=体脂肪がスリム化という謎の等価交換が成立しているのだ。
― サンクコスト? いいえ“サンクスウェット(汗)”です
DeFi なら「年率 300%→10%? 撤退!」と即座に LP を外す層が、M2E では「せっかく汗かいたし、もう少しでタイトル昇格だから続けるか」と踏みとどまる。彼らが捧げているのは資金ではなく汗というコスト。汗は売却不能ゆえ、“損切り”などそもそも発想にない。むしろ「これだけ汗を流したんだから元を取るまで歩こう」という前向きなサンクコストバイアスが働く。
― 試合(ROI)に負けて勝負(QOL)に勝つ
数値上の投資リターンでは負けても、
- 健康診断の結果が改善(自己肯定感の向上)
- M2E仲間とオフ会(コミュニティ帰属)
- 早寝早起きで生産性向上(生活習慣の改善)
と、“非経済的 ROI” が積み上がる。M2E ユーザーの脳内収支表は、トークン損失を「QOL向上益」で黒字化する高度な複式簿記で回っているのです。
― 「損切り下手」はむしろプロダクト設計の勝利?
ゲーム理論的に言えば、運営は
- 報酬が減る→
- もっと歩く→
- 健康・称号・コミュ友達が増える→
- 離脱コスト(ノリ・習慣・友情)が雪だるま
というループを巧みに仕掛けている。結果、ユーザーは「もうやめる理由がない」状態にソフトロックされる。これは「損切り下手」ではなく「体験設計うますぎ」と呼ぶべきかもしれない。
― 結論:赤字でも上機嫌、それが M2E界隈
M2E 投資はマネーゲームとしては負けている人が多いかもしれない。しかし、長期的なQOLでは健康面でも人間的な豊かさ(コミュニティ帰属)という面でも勝っているのかもしれない。
“I lost some tokens, but I gained a six-pack and a squad.”
と言えるなら、試合には負けても人生の勝負には勝っている。最終的にウォレットの数字より健康(フィジカル・メンタル)の数値がよければ、それは立派なプラスサム──M2E界隈の定着率の高さは、この独特の損益計算が支えている。
健康はお金で買えない!と言うけど、もしかしてM2Eはそれが可能なのかも・・・?
おわりに:M2Eが示す未来と展望
「稼げるブロックチェーンゲーム」のブームは一巡し、投機的なP2Eモデルの脆さが露呈した今、残されたM2Eが一筋の光となっています。無論、M2Eにも課題はあります。トークン価格の低迷や報酬原資の確保、運動習慣のない層へのアプローチなど、乗り越えるべきハードルは存在します。
それでも「ゲームをするだけでなく自分も健康になる」「気軽にWeb3や投資のコミュニティに属せる」という付加価値は大きく、もはやコミュニティが構築されているM2Eプロジェクトは明確なやめる理由がない限り、ユーザー離れが鈍化している状況です。
ブロックチェーンゲームはM2Eしか持続性がない──この断定が絶対的に正しいかどうかは将来の検証を待つ必要があります。しかし、少なくとも現時点で「持続性のあるGameFiのモデルケース」として最も説得力を持っているのがM2Eなんじゃかないかと思っています。
今後、他ジャンルのブロックチェーンゲームもこの知見を取り入れ、「遊んで楽しい+αの実益やリアル価値」を提供できれば、第二第三の持続的ヒットが生まれる可能性もあります。でもそれはWeb3やブロックチェーンが本当にマスアダプションしてWeb3プロダクトがYouTubeやテレビCMにバンバン出てくるくらいになったらだと思います。
というわけで、今回はM2Eに対して思っていることをSuperWalk視点からコラムっぽく書き綴ってみました。
これからM2Eをやってみたいと思う方、ぜひSuperWalkをおすすめします!イベントが高頻度であり、歩くだけではないゲーム性も高く、コミュニティもあり、時にはオフラインのイベントもあります。まずは公式のオープンチャットを覗くだけでもどうぞ♪
オープンチャット「SuperWalk日本🇯🇵」
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