ステーブルコイン時代を見据えた「やり直し」の宣言
開催概要(何のAMAだった?)
今回のXスペース(AMA)は、Kaia Foundationが韓国コミュニティと「より率直に」対話し、これまでの不満や誤解をほどきながら、信頼を積み直すことを目的に設けられた回です。進行はHJ(ZANGL在籍のリサーチャー)が担当し、テーマは大きく「韓国コミュニティとのコミュニケーション」「ステーブルコインを軸にした将来像」「トークノミクス(インフレ含む)」の3つで進みました。
登壇者と、冒頭で共有された前提
登壇者は、Kaia FoundationのSam(議長)、Kim Woo-seok(Kaia Foundation Director兼LINE NEXT CSO)、John(ステーブルコイン事業を統括)ら。冒頭では「どんな質問でも歓迎するが、誹謗中傷は避けてほしい」という注意喚起があり、途中ネットワーク都合で一時中断もありました。
セクション1:韓国コミュニティとの“距離”はなぜ生まれたのか
韓国側の不満として繰り返し出たのは、「検討中・議論中ばかりで具体がない」「韓国語での直接対話が減った」「結局、見に来ない」という点です。これに対してSamは、ここ数か月でコミュニティタウンホールの形式を変えた結果、韓国語での直接コミュニケーションが薄くなったのは事実だと認めたうえで、改善策として次を約束しています。
・週1回は最低30分でもDiscordに入り、質問にできる限り答える
・韓国語での対話機会を増やす(今回のAMAを転機にする)
・守秘や進行中案件の制約で言えないことはあるが、完了したことは結果が良くても悪くても、よりクリアに共有する方向へ寄せる
Johnも補足として、「確定アウトプットが出るまで黙る時代ではない」という考えを示し、規制系・ライセンス系の案件は時間がかかるからこそ、たとえ“進行中”レベルでも継続的に共有して可視性を上げたい、というスタンスを語りました。
価格下落への不満:できること/できないこと
参加者からは「5,000ウォン近辺から100ウォン台まで下落したのに、なぜ今さら対話なのか」「財団運営費は大丈夫なのか」と、かなり強い質問が出ました。
Samは率直に、価格下落が財団運営に影響するのは事実だと認めつつも、価格そのものを直接動かす手段は限られており、最終的には“事業実績・チェーン実績”で価値を作るしかない、と述べています。
あわせて、過去は新規トークン発行やNFTなど「新しい資産を作って盛り上げる」型に寄っていたが、市況サイクル依存が強く、結果としてKaiaトークン価値に十分つなげられなかった、という反省も言及されました。
「レベニュー(収益)メタ」への転換宣言
議論の中で繰り返し強調されたのは、「ハイプや新規トークン発行で価値が伝播する時代は終わり、収益がないと評価されにくい」という見立てです。
最近のマーケットで“収益メタ”が語られる流れ(例として、近い文脈のプロジェクトのトークノミクスが意識されていること)にも触れつつ、Kaiaとしてはオンチェーン内だけでなくWeb2企業も含めて売上を作れるプロダクトを準備している、という説明でした。
LINE連携:現状の課題と、方針転換(DFポータル→UniPay)
「LINEと本当に連携できているのか」「LINE内で目立つ導線がない」という指摘に対し、現状のミニDapp系の取り組みは期待ほど伸びていない(初動後に失速、売上も出ていない)と認めたうえで、今後の方向性として大きな話が出ています。
・DFポータルは、ウォレットサービス「UniPay」に変換し、ステーブルコイン中心のウォレットとして再ポジショニングする
・報酬のための“謎コイン”中心ではなく、USDTや各国ローカルステーブル(JPY圏、KRW圏、THB圏など)を「獲得・保有・利用」できる設計に寄せる
・LINEでの正規露出は、規制・審査・上場企業としての慎重な検討があり時間がかかったが、7か月ほど前からLINE側と内部検討を続け、かなり終盤まで来ている(ただし具体の公開は制約あり)
・展開は一気に全世界ではなく、まず日本(約9,000万MAUに先に到達)→その後、台湾・タイなどへ拡大する計画
Johnは、2017-2018頃にLINEで構想していた「国を跨ぐロイヤルティ/リワードの共通化」「FX的な需要に耐えるローカルステーブル」の発想は当時は制度面で難しかったが、いまは環境が変わった(JPYCの動き等)ことで実現可能性が上がっている、という“長期の伏線”も語りました。
韓国のKRWステーブル関連:大手とのPOCは何をやっているのか
韓国で進んでいるPOCについては「相手が大手で守秘が厳しいため、名前や詳細は出せない」が前提です。そのうえで示された説明は次の通りです。
・相手側の目的は「発行体になるための事前準備」
・発行体は多数にばら撒かれず、少数に絞られる可能性が高いという見立てがあり、各社が水面下で準備している
・Kaia側の目的は、KRWステーブルが実装される局面で「Kaiaチェーンが十分に検証され、採用しやすい状態」を作っておくこと
・東南アジアを含むクロスボーダー送金・決済の現場でユースケースが立ちやすく、Kaiaが持つネットワークが“韓国の発行体候補”にとって魅力になり得る
さらにHJは、ステーブルコインは単純なPOCではなく、リザーブ検証・AML/コンプライアンス・オン/オフランプなど多層のインフラが必要で「今から作るものは後戻りしにくい」ため、いまの仕込み自体が将来の本番に直結する性質だと補足しました。
USDTの発行量が伸びない問題:原因と打ち手
「USDTが増えない」問いに対しては、発行判断はテザー側だが、結局はチェーン上のユースケース不足が原因で、使われない限り増えない、という整理でした。
打ち手として挙がったのは、預入・決済・送金など日常寄りの用途を増やし、オン/オフランプや取引所入出金の基盤は既に整えたので、次は利用を増やすフェーズ、という流れです。
具体例として、USDT預入を起点にしたプロダクト(例:SuperOne等)や、UniPayでの機能拡張、さらに将来的なクリプトカード発行計画にも触れられ、「発行量を伸ばすこと自体がKPIの一つ」と明言されました。
各国ローカルステーブルのオンボーディング状況(アジア中心)
この回で最も情報量が多かったパートの一つが、各国ステーブルの“面”の作り方です。出てきた名前と状況は以下の通りです(細部は議論中のものも含む)。
・インドネシア:IDRXはオンボーディング済み、別のルピア建て(IDRP等)も進行中
・マレーシア:MYR建て(MRYC等)を協議中
・タイ:大手取引所Bitkub側のサンドボックス文脈のTHB系と連携を検討
・フィリピン:Coins.ph側のPHPT系と協議中
・日本:JPYCの活用を協議中
・台湾:立法議論が進行中で、まだ“出てきていない”が、重要市場として準備
・シンガポール:SGD建てステーブルも協議中
・UAE:初期だが議論開始
そして、登壇者側の狙いとして「複数地域のローカルステーブルがネイティブに乗るチェーン」になり、KRWステーブル単体ではなく“他地域との交換・送金が回る状態”を作ることで韓国での説得力が上がる、という構図が繰り返し語られました。
Kakaoとの関係は?(率直な回答)
質問者が期待していた「LINEとKakaoの両輪」については、回答はかなり率直で、現時点でLINEほど可視化できる協業はなく、各系列会社と個別に必要に応じて協力はあるが、今ここで言える具体はない、という整理でした。
トークノミクス(インフレ)と“いつ変わるのか”
インフレ調整の遅さには強い不満が出て、具体案(即時焼却、発行量の調整、短期的デフレ構造など)も投げられました。ここは整理すると、回答は次の論点でした。
・発行量は「価格に応じて増減する仕組みではなく、固定発行」である(価格下落で発行が加速するわけではない)
・一方で、インフレを下げるべきという方向性自体は共有されている
・ただし、急激に削るとチェーン/財団の運営と直結し、現状は簡単ではない(過去に焼却してリザーブが厚くない構造にも触れた)
・技術アップデートと並行して、バリデータ構造をパーミッション型へ移行する計画があり、それと合わせてトークノミクス改編案を準備中
・目線は「来年上半期」に、改編案の提示と意見聴取の場を作る
また、参加者からの「燃えているのに長期の話ばかり」という指摘に対しては、短期でできる施策も検討する、と受け止める姿勢を見せました(ただし、この時点では具体策の提示までは至っていません)。
マーケティング面の反省と、韓国リテールへの向き合い
韓国側からは「指数作り的なマーケをしていたのでは」「韓国の初心者導線(ブログやYouTube等)が弱い」「グローバルばかり見て韓国が手薄」という指摘が出ました。
これに対しては、統合後にグローバル認知が落ちたためグローバル施策(Kaito連携等)を優先した事情は説明しつつも、韓国向けの努力が足りなかった点は否定せず、今後どうやるか検討して動く、という回答でした。加えて、ステーブルコイン局面では評価指標や情報流通のされ方自体が変わり、従来の“Web3ネイティブな宣伝”から「実績が見える」世界に寄っていく、という見立ても共有されています。
LINE NEXTの資金調達(約1,800億円規模)とKaiaへの関係
質問に対し、LINE NEXTが調達した資金は、Web3プロダクト開発とマーケに使われている、という説明でした。また、契約上「プロダクションはKaia基盤で進める」趣旨の独占条項があることにも触れられ、UniPay等の開発・展開の原資になっている、という整理です。
一方で、財団に資本注入して市場の安心材料にする、といった一般企業的な手法は構造上難しい(財団の性格や資金使途の前提が違う)とされ、最終的には「LINEのレバレッジでトランザクションと実需を作るのが本質的な貢献」という言い方に収束しました。
RWA(Galactica)進捗:船舶金融のトークン化
RWAでは、Galacticaが継続中で、規制適合や実務難易度で遅れたが、近く形になる準備が進んでいる、という説明がありました。内容はインドネシア市場を軸に、主に2類型を扱うという話です。
・船舶購入時の短期資金(ブリッジローン的ニーズ)をトークン化し、投資機会にする
・分割/条件付き購入のような契約構造から生まれる収益や資金需要をトークン化し、投資家に還元する仕組みを設計する
加えて、SuperOneのようなUSDT預入型プロダクトと背後のRWA案件を接続し、預かった資金がRWA側に回る導線も視野にある、と語られました。ただし初期は規制上、適格投資家・機関投資家向けになり、リテール開放は将来的に別地域の枠組み等も含め検討、という段階感です。
ゲーム領域:過去の反省と、次の前提条件
過去のゲーム施策については、IPや制作品質とは別に、当時はウォレット連動の制約でiOS/Androidの体験が弱く、ユーザーに刺さりにくかった、という回顧が語られました。
一方で、今後はミニプログラム的な流れやプラットフォーム側の変化もあり、より“アプリ内で成立するUX”を作れる環境が整いつつある、という見立てです。また、リワードはアルトコインよりステーブルの方が継続率が高い、という実験的な話も出ており、ステーブルコイン報酬を前提にしたリワード基盤を整備し、開発会社へ提供する構想が述べられました。
まとめ:この回で見えた「約束」と「宿題」
約束(明言されたこと)
・韓国コミュニティとの接点を増やす(週次でDiscordに入る、韓国語での対話機会を増やす)
・“収益と実需”を軸に、ステーブルコイン基盤でのプロダクト転換を進める(UniPay中心)
・来年上半期を目線に、バリデータ構造変更と並行してトークノミクス改編案の意見聴取を行う
宿題(不満が残りやすい点)
・価格下落に対する短期施策は「検討する」段階で、具体案はまだ提示されていない
・POCや提携先は守秘で言えないことが多く、“検討中”が続くことへのフラストレーションは残る
・LINE連携は「終盤まで来ている」としつつも、ユーザーが実感できる形(露出・導線・実利用)をいつ出せるかが次の焦点
と言うわけで、今回のAMAではかなりKaiaの現状と具体的な施策について突っ込んだ話があった濃い内容でした。個人的にはKaia上でJPYCが使えるようになったら嬉しいです。
今後の進捗が楽しみです!

